『宇宙よりも遠い場所』1話の構成を分析してみた
ネタバレ注意
①きまりの部屋・昼
母親がきまりの顔にタオルを乗せる
きまり、息苦しさに目を覚ます。
散らかった部屋、偶然に日記を見つけて読み返す。「青春する」と書いてある。きまりが泣く。OPへ
<序盤では、「事件」が起きたり「敵」が現れたり「危機」に陥ったりしなければいけない。この場合は主人公のきまりに青春の「危機」がおとずれている>
②教室
「青春する」を実行しようとする。きまり「明日学校をさぼって東京へ行きたい」
いけばいいじゃん、と背中を押される
<危機を脱するために行動を起こそうとする。さっそくストーリーが転がって行く>
③きまりの部屋・夜
東京の妄想する。妹に見られる。
④駅・朝
制服のまま家を出る。駅のトイレで私服に着替える。
いつもと反対の電車に乗ってあてのない旅に出る、と思いきや、(フリA)
⑤教室
結局学校に来てしまった。(オチA)
<ギャグはあってもありすぎることはない>
⑥神社
めぐちゃんに悩みを聞いてもらう。失敗するのが怖くて何もできない自分が嫌い。
⑦駅・夜
めぐちゃんと遊びに行く約束をし、別れる。
電車が来てる。報瀬が階段をかけ上がり、封筒を落とす。
封筒を拾うきまり。封筒の中には百万円。
<1話の中で最も秀逸なシーン
しらせが100万円の入った封筒を落としきまりがそれを拾うという一見何でもないシーンに見えるが、このシーンは
・きまりが100万円を拾うという「大事件」
・100万円を落とすというしらせのポンコツっぷりを示す
・後にきまりとしらせが巡り合うきっかけとなる
と、3つの意味を持っている。1つのシーンにこれだけ意味を持たせると、ストーリー全体に無駄が減る。無駄が減ると、テンポが良くなる>
⑧教室・朝
めぐちゃんに百万円を見せる
⑨廊下
百万円の持ち主を探す。めぐちゃんが協力してくれる。
きまりがしらせとすれ違う。シャンプーの匂い。
<シャンプーのにおいで人を特定するというおもしろいアイデア。アイデア自体がギャグっぽいとこも良いし、ストーリー的にわざわざ探す手間をはぶいている
もし長々と100万円の持ち主を探すシーンを続けてたらだるくなる>
⑩女子トイレ
報瀬がトイレの中で泣いている。「しゃくまんえん」
封筒の中身を見せる。しらせが号泣しながらきまりに抱きつく。
<どういうシチュエーションでどういう行動をとるか、でキャラは立つ。
このシーンで、しらせは良い子なんだなと視聴者に伝わる
あと、⑦で起きた事件が解決してる。
事件が起きたなら解決されなきゃいけないし、戦いには勝敗がつかなきゃいけないし、嘘をついたらバレなきゃいけないし、秘密があるなら明かされなければいけないし、片想いには決着がつかなきゃいけないし、喜んだ後には落ち込まなきゃいけない。
現実世界とは違ってフィクション世界にはそういう法則がある。>
⑪ベランダ・昼
南極に行きたいらしいしらせ。周りの人には反対されている。
バイトして百万円貯めた。南極に絶対に行く。
きまりがぽかーんとする。
<超重要シーン
このシーンで『宇宙よりも遠い場所』という物語にベクトルが生まれた>
⑫コンビニ・夕方
めぐっちゃんにしらせの話をする。日向がレジをしている
南極行く難しさを語るめぐっちゃん。
<2話から登場の日向がちらっと出てる>
⑬図書室
南極の本をよむきまり、景色が綺麗。窓の外にしらせを見つける。(フリB)
<南極に興味を持つきまりを描くと同時に、⑭でしらせを助けに行く前振りになってる。>
⑭駐輪場
しらせを待ち伏せする女子。百万円を狙っている。
きまりがしらせを助ける(オチB)
<100万円が再登場。すでに出ている人物やモノを有効活用している。そうすることに各シーンにつながりができる。
因果関係はとても大事で、もし仮に
きまりがジョージオーウェルの1984年を読んでる。窓の外には女子連中に絡まれるしらせ。あんたちょっと美人だからって調子乗ってんじゃないよ、とか言われてる。そこにきまりが走り込んでいって分厚い本の角で女子連中を殴りつけ追い返す
みたいなシーンになってたら、一体何のアニメかわからない。ポプテピピックじゃあるまいし
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⑮東屋・夕方
きまり「馬鹿にされても頑張れるのって凄いと思う」
一緒に行こうと誘われる。
⑯きまりの部屋・夜
公園でのことを回想するきまり。
広島まで砕氷艦を見に行く。ついてきてくれるのなら本気だと信じる、としらせ。
⑰きまりの部屋・朝
部屋が片付いてる。
<①との対比>
⑱駅・朝
今度こそ電車に乗るきまり。
モノローグ怖いけど、やめちゃいたいけど、意味のないことなのかもしれないけど、でも!
<④⑤との対比。きまりの変化を描いている>
⑲新幹線
富士山の写真を撮る。駅弁を半分ずつ食べる。めぐっちゃんにLINE送る。
<めっちゃ青春してる。①で提示された青春の「危機」を脱している>
⑳広島の港
砕氷艦に到着。大きさに驚く。
赤道を抜け、嵐を抜け、氷を割り、日本から遙か14000キロ
㉑コンビニ
日向が地球儀の南極を見てる。
<次回への伏線>